価値に基づく診療シンポジウムのご案内
日時:2017年2月12日(日)13:30〜16:30(13:15受付開始)
場所:東京大学本郷キャンパス 伊藤国際学術研究センター 3F 中教室
http://www.u-tokyo.ac.jp/ext01/iirc/access.html
VBP(values-based practice:価値に基づく診療)は、患者医師関係において行われる臨床上の意思決定を改善する方法論である。本シンポジウムでは、臨床推論・多職種連携・倫理という側面からVBPの理解を深め、事例検討を通じて、VBPを臨床場面でどのように用いるのか参加者の皆様と議論を深めたい。
- 募集対象・人数
医療福祉系専門職の方(50名)
- 参加費
無料
- 参加登録
参加をご希望の方は、2月1日(水)までにメールで、
kosaka-junko@umin.ac.jpまで、以下をご記入の上お申込みください。
- ご氏名(ふりがな)
- ご所属
- 専門分野
- 卒後年数
- メールアドレス
<プログラム>
13:30〜13:40 開会
13:40〜14:00 価値に基づく診療と臨床推論(講義)
東京大学医学教育国際協力研究センター 大西弘高 講師
14:00〜14:20 多職種連携における価値の意義(講義)
筑波大学附属病院総合診療科 春田淳志 病院講師
14:20〜14:40 価値と倫理的事例検討(講義)
東京医療センター教育研修部臨床研修科 尾藤誠司 医長
14:40〜14:50 休憩
14:50〜15:50 事例検討(グループワーク)
15:50〜16:20 全体討議
16:20〜16:30 閉会
- 参考学習資料
- ブログ:VBP的診療推論. http://vbp.hatenablog.com
- Facebook page : https://www.facebook.com/VBPed/
- 書籍:大西弘高, 尾藤誠司. 価値に基づく診療 VBP実践のための10のプロセス. MEDSI.
(書籍の購入は必須ではありませんが、お持ちの場合はご持参ください。ブログはご受講前にご覧ください。)
- 連絡先
東京大学医学系研究科医学教育国際研究センター
〒113-0033 東京都文京区本郷 7-3-1医学部 総合中央館 2F
電話: 03-5841-3481
E-mail: kosaka-junko@umin.ac.jp
第2回 VBP実践ワークショップの終了のご報告と御礼
本日、第2回 価値に基づく診療(Values-based practice)実践ワークショップが開催されました。今回は、多職種でのチーム構成を重視し、医師・理学療法士・作業療法士・心理士などバラエティーに富んだ職種の皆様にご参加いただき、下記の目標とコンテンツで開催しました。
ワークショップの目標
- VBPの10のプロセスを理解する
- 価値の多様性を理解できる
- 患者の価値を引き出すスキル(ICE-StAR)の重要性を知る
- VBPにおける多職種での議論が有用であると知る
コンテンツ
レクチャー「価値に基づく医療の概要と10のプロセス」
グループワーク(価値への気づき)
模擬多職種カンファ(前半)
レクチャー「ICE-StAR」
模擬多職種カンファ(後半)
※FB pageでWSの様子をご覧いただけます。
参加者の皆様のご感想
「多職種での議論で価値の多様性に気づいた」
「様々な職種の価値が相乗的に作用することが分かった」
「ポジティブな価値が困難事例を打開するきっかけになりうるのがわかった」
「自分の職種と違う役を演じることで、その立場を理解できた気がする」
積極的なご参加、ご議論を頂くともにWSに高い評価も頂き主催者も大変嬉しく思っております。今後も継続的に開催させて頂きますので、今回ご参加頂けなかった皆様も、本ブログとFBでフォローをお願いできればと存じます。
今後も、価値に基づく診療を皆様と一緒に学んでいければと思っております。
EBMはVBPのパートナーPart2 〜軋む車輪の原則〜
今回は、VBPの10のプロセスの8つ目、軋む車輪の原則を解説する。これは前回の二本の足の原則と対(ペア)になる考え方である。
二本の足の原則は、「エビデンスを考えるときには、価値も同時に考えよ」という意味であったが、これに対して、軋む車輪の原則は、「価値に注意を払っているときにも、エビデンスを忘れてはいけない」というメッセージを発している。
「軋む車輪」は、日本人には中々馴染めない言い回しであるが、英語のことわざに由来する。The squeaky wheel that gets the grease(軋む車輪には油をさされる)は、「自己主張をすることで周囲からの注意を引きつけることができる」、ということを意味する。
すなわち、ヘルスケアにおいて、価値ばかりが音を立てて周囲の注目を集めているときには、医学的な事項(エビデンス)から目が離れてしまうリスクがあるということを指摘している。ときに、患者の心理社会的側面や倫理的観点に議論が集中しているときに、肝心な医学的側面の評価が十分になされていないということはしばしば経験される。
これは家庭医療学において、生物心理社会モデル(Biopsychosocial Model: BPS model)が重要視される背景とも関連すると考えられる。昨今話題となっている「見なし末期」も同様の枠組みの中で議論できるかもしれない。「本人の意志」、「家族の希望」、「乏しい社会資源」などが過度に前面に立つことで、医学的評価が忘れ去られるということに歯止めをかけるのが軋む車輪の原則であろう。
価値という多様性、複雑性、不確実性の高い事柄にアプローチする際には、生物学的・医学的な考察とのバランスが殊に重要であることは容易に理解できる。いずれにしても、やはり、EBMはVBPの重要なパートナーであると言えるのは間違いない。