VBP的臨床推論

価値に基づいた診療(Values Based Practice: VBP)を学ぶ

足し算から生まれる価値

 平成29年1月13日の日本専門医機構の第9回理事会において、総合診療専門医のプログラム基本構成に関して「1年目に内科を1年間、2年目に救急を1年間、3年目に外科または小児科または内科を1年間、それぞれの専門領域の指導医の下で行い、地域総合診療医として認定」する案が議論され、同年1月17日にその報告がHP上でされました。

http://www.japan-senmon-i.jp/aboutus/doc/tayori_09.pdf

  この案について、VBPという視点から考えてみたいと思います。

 本ブログでは、医療における枠組みとしてのVBPの新規性の1つは、「医療者の価値」に光を当てていること、とお伝えして参りました。

これまで2回のVBPワークショップにご参加頂いた皆様のご職種、専門領域は非常に多岐に渡ります。医師、歯科医師、薬剤師、理学療法師、作業療法師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカー [順不同] の皆様にご参加頂きました。また参加頂いた医師の皆様の専門領域は、総合診療医(家庭医)、消化器内科医、救急医、集中治療医、産婦人科医、小児科医 [順不同]といった多様性に満ち、それぞれ異なる価値を背景に積極的な議論が展開されました。

 ワークショップでの議論では「個人的には・・・」という枕詞からはじまるコメント、「・・・医/・・・師の立場からは〜〜〜」というコメントが頻発します。ここから、分かることは医療者の価値には、個人としての価値、職種・専門としての価値が内在するということです。専門領域に話を絞りますと、医療者の専門領域というものは、その人の価値に非常に大きく寄与し、医療者は自分の専門を修練している間に、そのプロフェッショナルとしての価値が形成されるということを意味すると考えられます。

 さて、冒頭の案ですが、「1年目に内科を1年間、2年目に救急を1年間、3年目に外科または小児科または内科を1年間、それぞれの専門領域の指導医の下で行い、地域総合診療医として認定」された医師には、どのような価値が形成されるのでしょうか。足し算から生まれる価値とは、どういったものでしょうか。

 筆者自身も答えを見つけられておりませんが、今後、皆様と考えていければと思っております。

 

VBPはEBMのパートナー Part 3〜科学主導の原則〜

 今回はVBPの10のプロセスのうち9つ目、科学主導の原則を概説する。

これは端的に言うと、「高度先進医療領域での意思決定においては、エビデンスと価値の双方を考えよ」というメッセージである。

 科学技術の進歩により医療界は多くの恩恵を受けてきた。その一方、人工授精による不妊治療、高齢者の経管栄養・胃瘻造設の問題、臓器移植、集中治療における終末期など、多くの倫理的課題に医療者は取り組んできた。今後は、iPS細胞や人工知能(Artificial intelligence)などにおいても同様の議論がなされると思われる。

 科学技術の進歩により、我々は多くの選択肢(オプション)を得ることができる。新しい技術によりもたらされる可能性と多様性に人々は魅了されるが、多くの場合、それぞれの選択肢には功罪が含まれ、様々な価値が絡み合う。

 そして、その功罪なり価値を鑑みてその選択肢を用いるか否かの意思決定をするのは結局のところ、その人(当人)である。意思決定の際には、当人たちのエビデンスと価値との双方のバランスを慎重にとりながら、議論するべき、というのが科学主導の原則の考え方である。これは、先人たちにより成されてきたものであり、特に目新しいものではないかもしれない。ただ、価値に注目して、ここまでご紹介したVBPのプロセスを丁寧に考察し、当人たちのパートナーシップを構築することで、バランスのとれた意思決定が達成されれば、従来、高度先進医療に関連する議論で陥りがちであった「医学 対 倫理」というような対立は避けられるかもしれない。

 

 さて、皆様、遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。今年も本ブログとFacebookを宜しくお願い申し上げます。わずかでも皆様の日常診療のお力になれれば幸いです。

 また、2月12日(日)のVBPシンポジウムの参加者も絶賛募集中ですので、こちらよりお申し込みください!!

 

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年末のご挨拶

  今年もいよいよ残りわずかとなってきましたが、益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。

 本ブログは、5月に開設して以降、VBPと皆様の実臨床とをつなぐハブのような役割を目指し、更新を続けてまいりました。おかげさまをもちまして、12月28日現在で7500のアクセスを頂いております。お読み頂いた皆様に心より御礼申し上げます。

また、VBP実践ワークショップも9月と12月に開催することができ、参加者の皆様には高いご評価を頂いております。重ねて御礼申し上げます。

来年も、僅かながらでも皆様の診療のお力になれますよう、

をはじめとし、活動して参りたいと思っております。

 

皆様が晴れやかな新年をお迎えになられますよう、心よりお祈り申し上げます。
また、来年もなにとぞ変わらぬご厚誼のほどよろしくお願い申し上げます。